小呂島このごろ・初夏編
 初夏の小呂島は活気づきます。第17話でお伝えしましたように、勇壮な”まき網漁”で島の周囲(玄界灘)には、夜ともなれば船の漁火が闇夜に点々と、まるでネオンの街に島中がすっぽりと入ってしまったかのようです。
 さて、この時期、昼もまた夜に負けず様々な花々が競ったように咲きはじめ枝の緑も濃くなっていき、島をますます活気づけてくれます。その花々や島の初夏の風物をひとつひとつたどりながら、子ども達は学校までの一本道を通ってきます。
 では、皆様方にも島の初夏をご案内いたしましょう。
 ツワブキです。春にはあんなに小さく柔らかかったフキが、夏には
こんなに大きくなりました。私の住んでいる教員住宅のコンクリートの
割れ目(?)から、たくましく芽を出しましたので、採ってしまうのも可哀
想。そのままにしておりましたら、今ではこんなに大きく。どこかの地方
に”ド根性ダイコン”が、ありましたが、さしずめこれは、”小呂ド根性つ
わぶき”と命名したいと思います。
 タマネギの収穫が終わり、家々の軒下につるされています。島の
タマネギは大きくて歯ごたえがあり甘いのです。特に紫タマネギは
人気があります。博多までの距離がもっと近ければ、島の特産品
として市場に出回ることでしょう。
 おやっ?畑の脇にムラサキウニの殻が集められ天日に干されて
います。どうするんでしょうね・・・。これはやがて乾燥後、小さく砕か
れて、畑の肥料になるのです。(ヒトデもそうです。)島では畑に化学
肥料を使いません。昔々から自然農法なので、安心して食べられま
す。島の野菜の美味しさは、こんなところにあるのかもしれません。
通学路のビワは、島の子が密かにねらっている物です。今まだ緑と
黄色が半々で酸っぱくてとても食べられない(と思う)のですが。つい
先日小学生がぱくついておりました。(もちろんビワの持ち主のおばあ
ちゃんの許可をもらって)私はびっくりして「お腹こわすからやめなさい
!!」と言ったのですが、もう食べ終わっておりました。その子が翌日
平気な顔で登校してきましたのでホッとしました。でももっと大きくなっ
て、深いオレンジ色に色づくまでは食べないように再び注意しておこ
うと思います。(島にはお医者さんがいないので、やっぱり怖いのです。)
 ジャガイモ畑です。楚々としていてそれでいてたくましい紫の花は
とても愛らしいです。タマネギの収穫が終わると次はジャガイモが
大きく土中で育っています。ジャガイモ畑の向こうはタマネギ畑
だったところです。そこには間もなく、サツマイモの苗が植えら
れます。
 スイカズラの群落です。あたり一面、甘いにおいを放ち、うっとりとさ
せてくれます。花の付け根には甘い蜜があり、これをチュッチュッと吸う
のが、子ども達の楽しみです。
 ネズミモチの花です。純白の小さな花がビッシリと咲いています。やが
て秋になるとこの花一つ一つが濃い紫色の果実となり、それがネズミの
ふんに似ているものだから・・・・。変われば変わるものですね。
 おやっ、通学路にこれまた濃い紫色の点々が・・・。これは何でしょう?
何やら甘い香りも漂ってきます。頭上を見上げますと・・・クワの木でした。
そう、これがクワの実です。鳥が食べてフンと一緒に島中に落としていっ
たからでしょう。島のいたるところに見られます。勿論この実は熟す
とすぐに島の子ども達のおやつになります。甘い甘い桑の実のことは、
名曲「赤とんぼ」(山田耕筰 作曲)にも歌われていますね。はじめは、
この実も緑、やがて黄から赤っぽく、そして紫色になってポトリと落ちてく
るのです。その落ちる直前が一番甘いのです。今日の下校時もまた、島
の子達がクワの木に登っては甘い実をたくさん口に放り込むことでしょう。
舌を紫色に染めて。
シャリンバイ。車輪梅とは良く名付けたものです。梅のように白い5弁の
花が車の輪のようにくっついて咲くからこの名がつきました。島のシャリ
ンバイは花が丸いのでマルバシャリンバイというのが正しいかもしれませ
ん。奄美大島では、この樹皮を紬(つむぎ)の染料にすることで知られ
ています。
 小呂島といえば何よりもアザミ。このアザミもまた、島のいたる所で見
られます。あまりヒットしませんでしたが10年ほど前、島の御当地ソング
『小呂島ブルース』に〜〜アザミ花咲くナットリの浜〜〜と歌われました。
沖からの潮風に体をゆさぶられながらも、たくましく咲いています。
 最後はやっぱりこれ、クロバナイヨカズラです。県の貴重種です。毎年
きまって初夏(6月梅雨入り頃)になると、この学校までの峠道に、顔を
出します。濃い紫色の星形の花なのですが、もしかしたらこの花は、
萼(がく)が大きく変形していったものかもしれません。県外からも植物
の愛好家の方が時々見に来られます。ずっと向こうに学校も見えてき
ました。では、今日はこの辺りで、島の案内を終わらせていただきます。
                                  (H18,6,8)
※初夏の小呂島はいかがでしたか?皆さんの住んでいる土地と、玄界灘のど真ん中の島との植生の違いが、いくらか分かっていただけたかもしれません。つい先日(6月1日)福岡市の教育長さんが来島されこの通学路を学校までご案内したのですが、その時、教育長さんは、「まるで自然の博物館のようですね。」と目を輝かせておられました。あっそうそう、教育長さんはその時クワの実を手に取るが早いか口に入れておいしいおいしいと、まるで子どものようにはしゃいでパクついてありました。もしかしたら、生まれて始めての味だったのかもしれません。この手つかずの小呂島の自然を、そのまま21世紀22世紀へと、いつまでも残していきたいものです。
 将来この島にも観光客が訪れる日が来ないとも限りません。その時には、皆さんにも『小呂島の自然を守る』手伝いをしてもらいたいものです。
第18話 終わり