『新船を祝う』
11月10日(土)島に一艘の新船がやってきた。漁師さんにとっては、一世一代の大慶事だ。
 今回のSさんちの○○丸は、遠く呼子の造船所からやってきた。○○丸の船頭さんはその受け取りに、すでに数日前から出かけておられたようだ。
 Sさんのご家族は、秋空の下、西方彼方の水平線に自分のうちの新船が見えはじめるのを今か今かと待っておられた。我々教職員も早く見たくて何となく落ち着かない。
 今回は、たまたま学校休業日でもあるので、新船祝いに我々も駆けつける事が出来たというわけだ。
 やがて、島内の有線放送。 
 「島民の皆様、○○丸が、間もなく入港しまーす。お迎えをお願いしまーす。」が家々に告げられた。
 放送と同時に44軒のどこの家からも飛び出してくる人・人・人。
 やがて、西の水平線に小さい点となって波を蹴立ててくる真っ白い船。速い速い。見る見る間に、白い点だった船が大きな体となって眼前に。

 マストからマストへは、たくさんの大漁旗が飾られ、派手な事この上もない。
 造船所から、知人から、エンジン会社からとそれぞれの旗には、記名され、お祝いの方々の心があふれている。
 それ以上に、地域のみんなの祝い方がまたものすごいのだ。たちまち祝いの座が港に設けられる。大きな大きなビニルシートが船着場(エプロンという)に敷かれ、祝宴の準備が始まる。すぐ祝宴かと思うと・・・。
 その前に○○丸の船頭さんから、「出そーかー!。」と大きな声がかかる。「おう!」と島中の若衆が急いで新船に飛び移る。元気モンの子ども達も負けずに飛び移る。
 どうやら新船の乗り試しのようだ。私もあわてて飛び乗った。瞬く間に港外に出たかと思うと「シチョー」「シチョー」の掛け声と共に、大きく円を描いて猛スピードで駆け抜けていく。
 エンジン全開となると、船体は思いっきり浮き上がり、まるで空中を飛んでいるほどだから、祝いの赤タオルをハチマキにしていた子ども達も、その時ばかりは必死に船体にしがみついている。
 蹴立てていく波しぶきが、体の左右にかかってくる。それでも新船の快適さに若衆の笑顔は絶えない。どんなに船底が海面をたたこうと、へっちゃらで立っている。
 聞けば、時速50km以上はあるという。祝いの旋回が終わるとゆっくりと港へ帰ってくる。ここまで、約15分位の試運転の祝典だった。

 あとは、祝いの座だ。島民の主立った方々は祝いの円座を組んで、新船の航海安全、大漁を願って御神酒に始まり、刺身をいただき、しばし、
体を酔いにまかせる。
 わたしも今日は、たっぷりと酔わせてもらうことにする。昼までには、まだまだ時間もたっぷりだ。
 酔いが回るのが早い。